「故人様の遺言で葬儀は近親者のみで執り行います」
社会人の皆様なら一度は目にしたことがある文章かもしれません。
なんとなく意味は分かっているつもりですが、具体的に「近親者」ってどういう人のことを言うのでしょうか?
今回は「近親者の定義とは?親族との違いから喪中の範囲までわかりやすく解説」と題して、「近親者」についてまとめてみました。
近親者とは?
まず、「近親者」という言葉の意味を説明します。
近親者というと、葬儀や結婚式で「近親者のみの参列とさせていただきます」などと使うことがあると思います。
一言で言ってしまうと、「近親者」とは、家族や血縁の近い親族のことを意味する言葉です。
では、血縁の近い親族とは、具体的にどこまでの範囲のことを言うのでしょうか。
一般的には、三等親までの血が繋がっている親族のことを指します。
具体的に言うと、曽祖父、曾孫、伯父伯母(叔父叔母)、甥姪がそれに当たります。
いとこ(四等親)や、同居している自分の子供の配偶者(血縁関係ではない)などは近しい親戚のように感じますが、三等親ではありません。
しかし、現代における「近親者」の意味は、あいまいで、場合によっては、血縁関係になくてもごく親しい親戚や友人なども含まれることもあります。
ですので、あまり厳密に考えなくても、「近親者」と言われたら、ごく親しくしている血縁関係がある親族や間柄の人間、という風に考えても良いでしょう。
近親者の定義は?法律ではどうなっている?
法律の中では「近親者」の定義はどのように定められているのでしょうか。
民法734条の中に、次のような条例があります。
(近親者間の婚姻の禁止)
直系血族又は三親等内の傍系血族の間では、婚姻をすることができない。ただし、養子と養方の傍系血族との間では、この限りでない。
この条例の中では、「直系血族又は三親等内の傍系血族の間」を「近親者」としています。
詳しく説明すると、「親子や兄弟姉妹、祖父母、孫、おじと姪やおばと甥との間では結婚することはできない。ただし、養子と養親の実子などの間では、この限りではなく婚姻できる。」という意味です。
養子と養親の実子は、法的には兄弟姉妹(近親者)の関係と言えますが、血縁関係はないので、結婚は可能ということです。
また、いとこもこの範囲を越える三等親ではないので、結婚が可能です。
世間では、「近親者」の定義はあいまいなもので、何となく近しい親戚や間柄と言った認識で使われていますが、法律的には、このように「直系血族又は三親等内の傍系血族の間」と定義されているのです。
近親者と親族の違いは?
「近親者」に似ている言葉で、「親族」という言葉があります。どのように違うのか、説明します。
一般的な意味で考えてみると、親戚すべての人が含まれるように思えるかもしれませんが、民法では、「親族」について次のように定義されています。
第725条【親族の範囲】
次に掲げる者は、親族とする。
一 六親等内の血族
二 配偶者
三 三親等内の姻族
よって、「配偶者、六親等内の血族、配偶者、三親等内の姻族」が「親族」ということです。
ちなみに、「血族」には、生物学的な血縁関係にある自然血族と、生物学的な血縁関係になくても、法律上血縁関係があるとみなされる法的血族(養親と養子)の2種類があります。
「姻族」とは、結婚によってつながった関係(配偶者の家族、血族の配偶者)の人たちのことを指します。
また「近親者」には、配偶者は含まれません。配偶者には血縁関係はないので、血族ではありませんが、親族に含まれる点が、少々分かりにくいかもしれません。
喪中における近親者の範囲はどこまで?
喪中における近親者の範囲は、どこまで含まれるのでしょうか。
一般的には、故人から二等親までの親族が喪に服します。
具体的には、配偶者、父母、義父母、子ども(一等親)、祖父母、兄弟姉妹、配偶者の義父母(二等親)が該当します。
ですが、三等親以上であっても、故人と生前同居していたり、ごく親しい関係であった場合は、喪に服しても問題はないとされます。
また、地域差や親族間での取り決めがある場合もあるので、一概には二等親までとは言えません。
また、血縁関係にはなくても、故人と親しい間柄になった友人や知人が自ら喪に服すことも問題ありません。
喪中に絶対というルールや義務はないので、故人が亡くなったことへの悲しみや親しさの度合いで、決めるのが良いでしょう。
葬儀で近親者のみに通知するにはどうすればいい?
まずは、故人が亡くなった際に、家族葬への参列者を確認します。
事前に決めておいた方がスムーズですが、急な場合、故人に一番近しい人物に相談して、参列者の範囲を決めるのが良いでしょう。
知らせるのは、電話連絡が基本ですが、詳しい場所や日程などはメールやLINEでやり取りしても大丈夫です。やり取りが残るので、間違いを防げますが、一方的にならないように注意して下さい。
また、連絡をする際は、近親者のみの葬儀になることを事前に伝え、参列者の理解を得ておくことが大切です。
昔ながらの伝統を重んじる地域などは、家族葬の考えに理解を得られず、トラブルになってしまう場合もあるので、あらかじめきちんと伝えておきましょう。
近親者以外の方には、家族葬で葬儀をするため、参列へのお断りをする通知を出す必要が出てきます。
香典、弔電などは不要、通夜は行わないなど、きちんと明記しておくことが大切です。
どのような方法で連絡するかも、事前に考えておきましょう。
近親者が亡くなった人にかける言葉はどんなものがいい?
近親者が亡くなった方に対しては、お悔やみの言葉をかけてあげましょう。
「ご愁様です」「お悔やみ申し上げます」「ご冥福をお祈りします」「哀悼の意を表します」等が一般的です。
上記の中で、「ご愁様です」という言葉は口語でのみ使用できる言葉です。
実際に弔問に訪れた際に使用すると良いでしょう。
それ以外の3つは、弔電で使われる言葉ですが、「哀悼の意を表します」は口語体ではありませんので、注意してください。
また、「忌み言葉」と言って、亡くなった遺族の方に対して、使用してはならない言葉もあります。
死を連想させるものや、不幸が繰り返されるイメージがある重ね言葉はもちろんNGですが、故人の死因や亡くなった時の状況を聞くのはやめましょう。
遺族は、近親者を亡くして、とてもデリケートになっています。
自分だったらどんな言葉をかけて貰いたいか、どんな言葉ならば不快な気持ちになるかをよく考え、余計な一言は言わないように、遺族の気持ちに寄り添うことが大切です。
まとめ
皆さんが近親者についての知識を正しく身につける手助けになれば幸いです。
葬儀において失礼のないように正しく振舞いたいものですね。
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